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レポート
本講演会は、慶應義塾大学と在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本との共催、慶應義塾大学法学部、大学院法学研究科、大学院法務研究科、グローバルリサーチインスティチュート(KGRI)の後援で、フランス外交ネットワークの「法の日」の一環として開催されました。
慶應義塾大学 三田キャンパスでの対面参加ならびにZoom Webinarからのオンライン参加による方法で、慶應義塾大学をはじめとした学生、教職員、研究者はもとより、弁護士事務所や民間企業の知財部門、官公庁など、さまざまな立場の方々、およそ140名が参加されました。
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講演:Alexandra Bensamoun教授
パリ・サクレー大学 教授(知的財産・IT専門)
人工知能関係省庁間委員会 委員(フランス)
司会:君嶋 祐子
慶應義塾大学 法学部・大学院法学研究科 教授(知的財産法)
サイバーフィジカル・サステナビリティ・センター 代表
弁護士
(プログラム)
15:00 開場
15:30 開会/開会の挨拶
15:45 講演 「AIと知的財産:欧州とフランスの戦略を中心に」
17:00 質疑応答
17:20 閉会の挨拶
17:30 閉会
開会の挨拶
講演に先立ち、岩谷 十郎(慶應義塾 常任理事 慶應義塾大学 法学部教授(日本法制史))ならびにエリック・モレー様(在日フランス大使館 科学技術部 学生/研究者交流・大学・人文社会科学部門長、学術・大学交流担当官)から開会のご挨拶を頂戴しました。
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岩谷十郎先生は、慶應義塾大学の創設者である福澤諭吉が1868年に日本に初めて著作権制度を紹介したことに触れ、最近は人間の創作活動や発明まで生成AIで行うことができるようになり、これに伴って新たな課題が浮上している中で、今回フランスのAI政策についてベンサムーン教授の講演が行われることへの期待と、「法の日」の対話に参加するすべての人々への感謝の意を表明し、挨拶を締めくくりました。
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講演
「AIと知的財産:欧州とフランスの戦略を中心に」と題してご講演いただきました。
人工知能(AI)と知的財産に関するEUとフランスの戦略について、特にAIと著作権との関係に焦点をあて、AIの進展と文化的な創造の接点について内容が展開されました。
本講演では、クリエイションとAIの関係について、生成AIの開発・学習段階(アップストリーム)と生成AIの生成・利用段階(ダウンストリーム)に分け、それぞれの段階で適用され得る法について整理・紹介され、著作権法によって保護すべき行為について検討されました。
ダウンストリームにおける著作権問題について、著作権法の適用例外、AI規則の内容、フランスにおけるAI戦略やベンサムーン教授の今後の展望が紹介されました。
一方、アップストリームにおける問題としては、AIが生成したアウトプットに対する法的保護に関する議論が紹介されました。
ベルヌ条約(1886年)によれば、作家は必ず人間である必要があり、その権利は人間が有していて保護されるべきとあるものの、生成AIによって作られた生成物について、著作権法によって保護するのか、新たな権利を作るのか、もしくは、保護しないとするのかという問題は答えが出ていない問題であり、これから先、考えていかなければならないことであるとしました。また、そのような法制度は「人間によって創られたもの」を守るためにあるということが強調されました。
また、2024年には重要な選挙が多数行われるため、誤情報を避けるための措置が求められていることや、生成AIによる偽情報が流布しないようにAI生成物にAIによって作成されたものであることを明示する等、情報の透明性と正確性が重要であることも強調されました。
最後に、ベンサムーン教授の同僚で情報科学の仕事をしている人のご発言として「人というのは何事においても時間を要する上に、あまり厳密ではない。しかし直観力に優れている。コンピューターというのは素早く、大変に厳密ではあるけれども、非常にstupidである」という言葉をご紹介し、皆さんに安心して頂きたいということで講演を締めくくりました。
質疑応答の時間では、対面会場・オンライン双方からさまざまな質問が出されました。法律未整備な日本がEU AI規制法の影響(ブリュッセル効果)で注視すべきことや、GAFAMとの適切な競争環境保持のための法的な仕組みの整備、AIの政治利用への向き合い方、ディープフェイク犯罪への政策など、活発な質疑応答が繰り広げられました。
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記載の所属・職位は実施当時のものです。
本イベントは、CPS研究会の一環としてJSTムーンショット型研究開発事業JPMJMS2215の支援を受けています。