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レポート
2024年10月22日、知的財産法のスペシャリストであるミュンヘン工科大学 アン教授をお迎えし、電子商取引時代のアフリカとブランドの保護についてご講演頂きました。
会場となった慶應義塾大学 三田キャンパスには、18時開始という遅い時間にもかかわらず、慶應義塾大学をはじめとした学生、教職員、研究者に加えて、弁護士事務所や民間企業の知財部門から高校生まで、幅広い方々およそ50名が集まり、熱心に耳を傾けました。
講演:Prof. Dr. jur. Christoph Ann, LL. M.
ミュンヘン工科大学 経営大学院 教授
慶應義塾大学大学院法学研究科 特別招聘教授(国際)
司会:君嶋 祐子
慶應義塾大学 法学部・大学院法学研究科 教授(知的財産法)
サイバーフィジカル・サステナビリティ・センター 代表
弁護士
(プログラム)
18:15 開会/開会のご挨拶
18:20 講演
『電子商取引時代のアフリカとブランドの保護』
19:20 質疑応答
19:50 閉会のご挨拶
20:00 閉会
講演
アン教授から、アフリカ大陸の各国・要衝における人や物の具体的な動き、位置関係、距離などを会場の大型スクリーンに映し出された地図を参考にしながら、偽造品対策、ブランド保護における商標の重要性、知的財産法の役割について、講演頂きました。
アフリカにおいては、商標偽造の問題があり、特にサハラ以南のアフリカで深刻であり、司法制度や税関が完全に機能していないことが多く、また、eコマース、オンラインマーケットプレイスを通じた偽造品の流通は欧州でも未解決の問題であり、アフリカではさらに深刻であるということが紹介されました。
たとえば、偽造医薬品は、全世界の40%以上がアフリカに届いていること、ケニアでは販売されているアルコール飲料の半分近くが偽造品であること、ナイジェリアでは1500万人以上が偽造スマートフォンを使用していること、アフリカにおける違法取引の対象は薬物、武器、人身取引であることなど、統計を用いた説明がありました。
国境管理における税関当局の問題として、職員のトレーニング不足、汚職、各国商標庁との協力や連携及び法制度の欠如が挙げられるとし、それらに対しては企業の役割として、偽造品検知のためのトレーニングを提供することで税関職員を支援できるという解説がなされました。
また、商標申請から付与までの時間がかかり、スピードを上げるために贈賄が行われることがあったり、最終目的地が偽装されるという問題があったりすることが明らかにされました。
アフリカではモバイルコマースが主流で、各プラットフォームは偽造品対策を行っているものの、電子商取引の急増により、偽造品の販売業者との戦いが一層難しくなっており、その効果には限界があるとのことでした。
商標の執行は裁判所だけでなく税関でも対応可能であるため、流通し始める前段階にあたる主要市場と通過国での執行が重要であるとし、結論として、商標保護は偽造品対策において重要な役割を果たし、各国や地域の商標庁との連携が必要であること、特に税関での執行を強化することで、効果的に模倣品を排除できるとして講演を締めくくりました。
記載の所属・職位は実施当時のものです。
本イベントは、CPS研究会の一環としてJSTムーンショット型研究開発事業JPMJMS2215の支援を受けています。