NEWS&EVENTS
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レポート
2024年11月13日から2日間にわたって、欧州の知的財産法、AI規制に詳しいトゥールーズ第1大学 アレクサンドラ・メンドゥーザ=カミナード教授をお迎えし、知的財産法とバーチャル(特にメタバース)との関係、及び、知的財産法と生成AIとの関係についてご講演頂きました。
講演会は慶應義塾大学 三田キャンパスでの対面参加とZoom Webinar参加のハイブリッド開催で、2日間のべ約200人を超えるお申込みがあり、関心の高さが伺える講演会となりました。
講演:Alexandra Mendoza-Caminade教授
Professeure Alexandra Mendoza-Caminade Université Toulouse Capitole
ご挨拶:君嶋 祐子
慶應義塾大学法学部・大学院法学研究科教授、弁護士
サイバーフィジカル・サスティナビリティ・センター代表
司会:麻生 典
九州大学 大学院芸術工学研究院 准教授
(プログラム)2日間共通
・16:00 開会
・16:05 ご挨拶
・16:10 講演
・17:40 質疑応答
・18:00 閉会
11月13日:『アバターによる人のデジタル表現について:メタバース的な使用の法的インパクト』

メタバース、アバターの概念や用途の紹介から始まり、その法的意味、問題点についてご講演頂きました。
メタバースは、現実世界とリンクしていて法的規制が必要とされる中、各メタバースプラットフォームは独自のルールを持ってはいるものの、ユーザー保護のために強制的な法的ルールが適用される可能性があること、国際的な規制がないため実定法に頼ることが多いが、メタバース内で何が行われているかを把握し理解するには限界があるとの指摘がなされました。
アバターは、ユーザーのデジタル表現であり、ユーザーの行動を反映しますが、そこではアバターが権利を生み出すのか、責任を負うのかという法的問題が存在するとして、アバターの法的特徴を考察し、メタバースにおける適用法の適応性を判断することについて論が展開されました。
講演後の質疑では、クローンアバターの将来的な課題、法的人格を持つ可能性や、メタバースのアバターと人格権法理についての質問、さらに知的財産法の企業とユーザー間のパワーバランスや、ソーシャル・ネットワーキング・メディアでAI学習に自分の投稿を使われることに同意する利用規約変更について議論されました。



11月14日:『人工知能と知的財産法:欧州連合における近時の著作権分野の発展』

生成AIシステムが著作権に与える影響、特に、生成AIシステムを訓練するための著作物の使用や、生成AIシステムによって生成されたコンテンツについて、フランスやEUの法的規制の状況や著作権に関する課題を中心にご講演頂きました。
AI技術は新しいものではありませんが、2022年にOpenAIがChatGPTを発表して以来、生成型AIが注目を集めているとして、これにより、テキスト生成や理解が可能な大規模言語モデル(LLM)ベースのツールが登場していることがまず説明されました。
その上で、AIの訓練には大量の著作権で保護されたコンテンツが必要で、これが著作権侵害の問題を引き起こす可能性があること、また、AIによって生成されたコンテンツの著作権の適格性についても議論が必要であるとして、AI技術については、著作権の伝統的な原則と新たな技術革新のバランスを取る必要があることが指摘されました。
また、各国でAIの規制が異なり、著作権法の対応も様々ですが、フランスと欧州連合(EU)は、クリエイターの利益を重視した著作権法を持ち、AI技術に対する規制を検討していることが紹介されました。
最後に、AIの性能は人間の著作物に依存しているので人間の創造なしには限られた成果しか得られないこと、AIの進歩には人間による新たな創造が不可欠であるため、人間の創造の重要性が再認識されるべきであるとして講演を締めくくりました。




記載の所属・職位は実施当時のものです。
本イベントは、CPS研究会の一環としてJSTムーンショット型研究開発事業JPMJMS2215の支援を受けています。