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【開催の概要】
サイバネティック・アバター(CA)には、人の分身として操作されるメタバース上のアバターや、アバター・ロボットなどがあり、人の身体的・認知的能力を拡張し、物理空間とサイバー空間を自由に往来することを可能にする新しい技術基盤として注目されている。他方で、軍事利用や諜報・工作への転用可能性など、安全保障上のリスクも指摘されている。
本講演では、国際人道法・輸出管理・経済制裁・インフラ保護法制など、既存の法制度を踏まえつつCAと安全保障との関係を考察し、また、近時の地域紛争における無人機利用などの事例も参照しながら、CA時代の安全保障リスクにどう向き合うべきかを考察した。
【講演者】 宮岡 邦生 (森・濱田松本法律事務所 外国法共同事業 パートナー弁護士)
【日時】 2025年11月18日(火) 16:15~18:00 (開場16:00)
【会場】 慶應義塾大学 三田キャンパス 北館1階ホール
【言語】 日本語
【主催】 慶應義塾大学サイバーフィジカル・サステナビリティ・センター(CPSセンター)
【挨拶・司会】 君嶋 祐子(慶應義塾大学法学部教授、CPSセンター代表)
<背景>
サイバネティック・アバター(CA)、すなわち人の分身であるアバターがサイバー空間で利用され、また、フィジカル空間でもロボットをアバターとして使用する研究や実用化が進められている。生身の人間や法人が主体となって活動することを前提に作られている現在の法制度の下で、CAを利用して人が活動するようになると、どのような可能性が生まれ、どのような問題が生じると考えられるか。
<講演の概要>
安全保障、IT法に詳しい宮岡弁護士が、CAに関係する安全保障上の法的論点とし「国際人道法」、「輸出管理」、「経済制裁」、「インフラ保護法制、「投資管理」の項目において、CAの実用化に向けた課題について講演した。
CAが懸念国・懸念主体の手に渡った場合には、国境等の地理的制約を超えて軍事攻撃、サイバー攻撃、諜報・工作活動等が行われるリスクも高まっている。これらのリスクは、既存の法制度(国際人道法、輸出管理、経済制裁、インフラ保護法制、投資管理等)で対処可能なものもあるが、網羅的にカバーされているわけではない。また、CAを通じて人々の活動領域が遠隔地やメタバース空間に広がる中、既存の法規制に「うっかり」違反することのないよう、十分な啓発や予防措置(システム上の手当てなど)も必要となる。
<当日の様子>
質疑応答の時間では、「経済安全保障の今後の見通しについて」「3Dモデルの悪用リスク・規制についての考え方」などの質問が投げかけられた。また、安全保障に詳しい渡井理佳子教授(慶應義塾大学大学院法務研究科)からも発言があり、CAと安全保障を多角的に考える場となった。

<参加状況> 合計名13(登壇者2名/一般9名/主催スタッフ2名)
【プログラム】
16:15~16:30 開会の挨拶 君嶋 祐子
16:30~17:40 講 演 「サイバネティック・アバター(CA)と安全保障
~人はアバターとどう共生するか~」
1. CAと安全保障リスク
2. CAに関係する安全保障上の法的論点
3. CAの実用化に向けた課題
17:40 ~17:55 質疑応答
17:55~18:00 閉会の挨拶 君嶋 祐子